今(現世)も昔(前世)も大して変わらない>
一度死んでからまた生まれ変わった、と言ったら冗談かと疑う人が大半だと思うが、俺は信じる。

何故なら俺がその"一度死んでからまた生まれ変わった人間"だからだ。

前世、二児の母だった"私"は今、男子高校生として生きている。

娘も息子も成人していたし、夫は息子が妊娠しているときに愛人をつくったらしく病院から家に帰ったら娘と離婚届置いて出ていっていたから、特に心残りはなかった。

強いて言えば娘がいき遅れてないか不安なくらいで、わりとすんなり死んだことも男になったことも受け入れ、二度目の人生をエンジョイしている。

中学校のとき身長が高いことを理由にバレー部に誘われたのを切っ掛けにバレーをするようになり打ち込めることができ、五指に入るスパイカー、木兎光太郎さんがいるバレーの強豪校、梟谷高校に入学した。

娘が行きたがっていた高校だ。

あまりにも行きたいと言うから、
『じゃあ行けば良いだろ。お前の成績なら大体の高校に行けるはずだ』
と言ったら、
『私なんかが行けるわけないじゃん。次元が違うんだよ、お母さん……』
と悲しそうな顔で言うからその高校の話はそれ以来していない。

あまりに落ち込んでいるので一度だけ息子に聞いてみたら、
『姉ちゃんのことはほっといても大丈夫。心配するだけ無駄だよ。それより今日は俺が晩飯作るから休んでなよ。母さんは少し頑張りすぎだと思うよ』
と誤魔化された。

娘が行けない高校ならどれほどレベルが高い、もしくは学費が高い高校なのか気になって進路調査のとき調べてみたが、それほどではなかった。

娘はどうしてその高校を諦めていたのか今でも不思議でしょうがない。

俺は別に行けないわけじゃなかったから、せっかくだから梟谷を受け無事合格した。

高校でもバレー部に入り、今は先輩である木兎さんのお守り役だ。

今日も、いつものように木兎さんの自主練に付き合う。

皆、木兎さんの際限の無いスパイク練から早々に逃げるから付き合う人は黒尾さんくらいしかいなかった。

去年までは。


「「入れて下さいっ!!」」


元気よく入ってきた1年二人。

音駒の灰羽と烏野の日向。

それに、二人より先に来ていた月島もいる。


「木兎さんの練習に付き合う物好きが黒尾さん以外に三人も……」


思わず呟いた俺の言葉が聞こえていたのか木兎さんがキョトンとこちらを見る。

練習熱心な一年生達に少し感動していると、いつのまにか3対3をやることになっていたようだ。

実戦に近い方が学ぶことが多いし、それには賛成だけど……。


「……あの、コレ……」


黒尾さんに任せたら、木兎さん、日向、俺のフクロウチームと黒尾さん、月島、灰羽のネコチームに分けられた。

黒尾さんのチームは、こっちで一番高い木兎さんより高い身長しかいない。


「すげぇバランス悪くないスか……」

「いーじゃねーか! 昼間やれない事やろーぜ!」


いい笑顔でそう言う黒尾さん。

隣の日向を見ればキラキラした目でこちらを見ていた。


「日向はそれで良いのか……?」

「? はい! 東京の強豪のエースとセッターと一緒って嬉しいです!」

「!」

「赤葦が照れてる!」

「木兎さん五月蝿いです」

「チビちゃんもそう言ってるし、それに木兎と赤葦は一緒じゃなきゃ木兎がうるせぇだろ」

「…………」


子供の世話を押し付けられた感が半端じゃないが向こうもリエーフがいるし、日向で平均身長がグッと下がってるがその分日向は跳ぶ。

レシーブ力は心配だが上げさえすればセッターの自分がカバーすれば良い。

勝てないわけではない。

はしゃぐ木兎さんと日向に続いて俺もコートに入った。
















































































「ア"ーーーーーーーッ!!」


日向の打ったボールが月島のブロックによって阻まれる。

したり顔で日向を見る月島に、日向が悔しそうに叫んだ。

月島のブロックは黒尾さんのアドバイスのおかげあって確かに上達している。


「あの〜、そろそろ切り上げないと、食堂閉まって晩ごはん、おあずけデスヨー」

「!!!」


体育館の扉からマネージャーが顔を覗かせる。


「続きは明日!」

「解散!!!」


ごはんおあずけに反応した木兎さんと日向がすごい勢いでネットを片付けたため何とか食堂が閉まる30分前に入ることができた。


「こ……木兎さん、ついてます」


木兎さんの頬についた米を取りながら注意する。

本当は早食いも消化に悪いし、食べた気しなくなるから、よく噛んで食べなさいって注意したいところだけど一応先輩だし。

この人満腹中枢ないんじゃないないかと思うぐらい際限なく食べるから心配になるんだよ。

やることが娘そっくりでつい世話を焼いてしまう。


「嫁か」

「母って感じじゃないですか?」

「俺スガさんに言われた!」

「俺もよく夜久さんに言われます!」

「君ら何歳……?」


それ木兎さんにも言ってくれ。


「なんか、夜久は母ちゃんって感じだけど、赤葦は母さんって感じだな」

「「お母さん!」」

「赤葦は梟谷の母さんだぞ!」


黒尾さんがふざけて、リエーフと日向もハモって悪ノリする。

月島はニヤニヤとこちらを見て笑い、木兎さんは『気安くお母さんなんて呼ぶなー』と俺に抱きついた。

お母さんなんて久しぶりに呼ばれた。

もう十七年も経ったんだ……。


「ふざけてないで早く食べないと寝る時間遅くなりますよ」


木兎さんを引き剥がしながら五人に向かってそう言うと、『そういうところが母さんって呼ばれるんだと思いますけど……』と呟く月島の声が聞こえた気がした。

明日ツッキーで呼んでやろうと思う。
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